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金型設計

金型

私たちの身の回りには、プラスチックで作られた製品が数多く存在します。それらはさまざまな形状を有していますが、材料の作り方は大きく分けて2つ。材料から直接削り出して成形する方法と、形の空間を作って何らかの材料を流し込む方法です。後者の方法で物を作るための道具が金型。射出成形は材料となる樹脂を溶かして、ドロドロの状態にしたものを金型の中に押し込みます。射出成形用の金型は、材料を造形するための空間を有しています。

設計者

金型の設計者は、一言で言えば「空間クリエイター」です。樹脂を封入する空間にいかにキレイに収まるよう金型を造形するのか。本番では設計ミスが許されないため、大きなプレッシャーがあります。手がけている製品群の中には外観が重視されるもの、機能が重視される機構部品、一般雑貨や耐久性を要するものなどの違いがあり、用途によって何を優先するかが異なります。

特に機構部品の場合はシビア。歯車であればキレイに回らないと音がしたり、軸ものであれば真っすぐでないと全体が動作しなかったり、回転物であれば均等に分布されていないと振動を起こしたりします。軸や円筒が真っすぐであること、丸い形状が丸であること(幾何形状)を求められる製品が多いです。

設計者は製品図から金型用の製品図を起こし、それを基に金型構造図(組み図)と部品図を完成させます。それで終わりではなく、実際に組み上げた金型で製品の射出成形を試行し、寸法が出なかった部分を修正するなどの作業までを手がけます。

設計の段階においては、さまざまな要素を加味して総合的に考えることが前提となります。例えば射出成形は金型の中に樹脂を押し込んだ後、パカッと開いて製品を取り出します。この「開く」という動作は、両側が同じ位置で合っていないと軸も真っすぐになりません。それも踏まえて設計することが必要です。

熱で溶かした樹脂は金型から取り出すときには冷えて収縮し、体積が小さくなります。材質にもよりますが、例えば1.5mmの穴を開けたいときには、樹脂の収縮率を考えて1.55mmにしておかなければなりません。そのため、お客さまの製品図を金型用の寸法に置き換える必要があります。

設計思想

金型を作る段階で、金型の合成や形状の再現性、全体の強度などの設計思想がまず生まれます。お客さまが望む製品を作るためには、この設計思想の決定が欠かせません。最初に思想を固めておかないと設計の手戻り=設計ミスに繋がります。そのため、とことん思想決めの段階で構造は決めてしまって、固め切ってから図面化します。その途中で加工のしやすさなどを勘案して加工部品の形状を変える可能性はありますが、思想に則った作り方を変えることは一切ありません。それほど重要で、根幹をなす要素です。

設計思想の例

例えば丸い筒があり、その横に丸い穴が空いた製品を作るとします。この場合は、3つの設計思想が考えられます。

例1

丸い筒をまず作っておいて、あとから穴を開けます。製品を作った後に追加工程が発生するため、コストは高くなります。一方で射出成形の段階では丸い筒だけを作るシンプルな構造なので、寸法を確保しやすいのがメリット。また、8個取りなど多くの製品をいっぺんに取り出すことができます。

例2

金型を作る際、丸い穴だけを構成するピン(アンダーカット)を差し込みます。そして、このピンを何らかの形で抜いてから取り出すと、丸い穴が開きます。ピンを動かすギミックが必要なため、大掛かりな構造となります。また、2個取りや4個取りなど、個数にも制限がかかります。

一方で、入れ子の横に穴を開けるため、円筒部になる部分を丸く加工することができます。円筒形状の確保という意味ではワンランク上の手法です。

例3

筒にピンの形状を掘り起こし、金型が開いた際にスライドコア(横方向に動く金型)を動かして半分に割ります。回転物である筒の側面に割れ線ができてしまうため、製品の用途をうかがった上での提案となります。

構造の難易度も成形性も例1→例3→例2の順で、不良の発見しやすさも同様です。

ハヤシテクノの金型設計

ハヤシテクノが目標としている金型設計は、「再現性のある仕事」です。同じものを同じように作り続けることができることが何よりも大事なファクター。お客さんが望んでいるもの、喜んでいただけるものを提供し続けることが第一です。そのために一番必要なのはまず、品質に関わるトラブルを起こさないこと。そのためには再現性を追求した仕事が前提になってくるので、実現のための具体的手段として図面管理や部品管理などの工程に反映されています。

製品図

まずはお客様から製品図をいただきます。そしてでき上がった製品がどのように使われるのか、その周辺にはどのような物があるかを聞きながら、設計思想を固めていきます。しかし金型では作れない部分や、縦横方向の動作では作れない部分が出てくることがあります。その場合はお客さまに形状変更を依頼し、ディスカッションを経て形状を決めます。そして、弊社で金型の基本設計(製品図、構造図)を行います。

弊社としては、開発の源流から携わらせていただいたほうが、適切な提案がしやすくなります。

組図

お客様からいただいた製品図に対して、手書き(2次元設計)で寸法を整えるか、もしくは3次元設計でモデリングを行います。それをもとに、金型の入れ子周辺なども設計していき、全体の組み図が完成します。その後、今度は組図から部品図に展開する「バラシ」を行って、それを弊社の金型工場に図面化するよう手配します。

2次元設計(2D CAD)

2次元設計は平面図や断面図を頭の中で組み立てていきます。想像の領域の中で全貌が出来上がるため、全体の組図への収まり具合を検討する場合は、3次元設計に比べて圧倒的にスピードが速いです。

3次元設計(3D CAD)

3次元設計は各部位の形状が立体的に確認できるため、2次元設計に比べてミスが少なくなります。一方で、全体構造をビジュアル的に表現できるあまり、設計者の想像力が育まれない面もあります。仮に部品が収まったとしても、強度に問題はないのか。弊社では、設計者の柔軟な考え方を保つため、2次元設計も併用しながら教育を行っています。

高耐久

弊社の金型は、常に高耐久を目指しています。金型はあくまで射出成形のための道具ですが、その道具が高耐久かつ再現性を有していれば、製造現場は効率良く回ります。現場では高耐久を目指すために、硬い材料を多用します。ただ、一概に硬ければ良いというわけではありません。

というのも、射出成形で使うのは流れやすい材料と流れづらい材料があります。流れづらい材料は射出成形機で1トン近い内圧で樹脂を押し出すことになります。そうすると金型の壁にも同等の力がかかるので耐久性が求められますが、柔らかい材料の場合は弾力性を発揮して粘りますが、硬い材料は耐えられない――といったケースも発生するのです。

また、樹脂によっては金属粉が混ざっているものもあり、そうなると金型が削れてしまいます。材料や表面処理の追求は、高耐久を実現する上での永遠のテーマです。表面処理はチタンコーティングやイオン窒化などの一般的な手段を活用しています。

ガス抜き

スーパーエンジニアリングプラスチックなど、材料によってはガスが混ざっているものも少なくありません。そうした材料を射出成形する場合は金型にガスが詰まると、成形後に製品の外観が悪くなったり、磁石の場合は性能が落ちたりするなどの問題が生じる可能性があります。そのためZ方向へのクリアランス調整が必ず発生するため、エアーベント回路からガスを抜きます。

ガスは腐食性のため錆びないステンレス系の材料を使いたいところですが、硬度があまり上がりません。昔からあるダイス鋼系の材料を多用し、腐食への脆弱性を表面加工でカバーしています。この工程を繰り返して過去の経験の蓄積を盛り込んで毎回新しい金型を製作しますが、1回で成功させるのはなかなか難しいものです。

図面管理

金型の部品が寿命を迎えることはよくある話です。現場では、その際に入れ子をすぐに入れ替えられるよう、再現性を確保しなければいけません。一昔前は、入れ子の寸法を現場で合わせた上で「言語管理」していましたが、再現性をより高めるために「図面管理」にシフトしました。現在は図面通りに入れ子を作って差し込んでおり、トラブルが起きたケースもありません。

弊社は中国にも工場を構えていますが、現地で金型の製造は行っておらず、日本から送り込んでいます。金型の部品が寿命を迎えたとしても、あらかじめスペアの部品を送っているため、すぐに入れ替えて製造することができます。

ランナー

溶かした樹脂が流れ込む経路です。金型作りは試作品であろうが完成品であろうが、似たような構造のものを作ります。試作品の段階で、樹脂が流れてランナーが何回曲がると圧力損失が起きてしまうのかを検証します。

スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)

耐熱性に優れたプラスチックで、最近では金属の代替としても良く使われています。金属を樹脂に変えて安価にしたい、というお客様のニーズに応えることができます。

位置検出

弊社では磁石を製造することが多いですが、最近では位置検出のセンサーとして広く使われています。車で言えば、シフトレバーがどの位置にいるのか。サイドブレーキを踏んだ時に、確実に踏めているのか。ウィンドウやステアリングがしっかりと動作しているのか。各部位で磁石が動きを検知し、CAN(Controller Area Network)というシステムに情報を伝達します。

ハヤシテクノの金型設計 こんなニーズにオススメ

最近のスーパーエンジニアリングプラスチックは金属代替と言われます。車のボンネットは昔なら鉄板でなければいけないのがカーボンになり、今や木から作った材料で車体を作る会社も出てきています。このように、金属を樹脂に置き換えることがかなり進んでいる傾向にあります。私どもはプラスチックに金属粉や磁粉を混ぜた材料の成形を得意としておりますので、金属部品を樹脂に替えてコストを抑えたいお客さまに提案しやすいです。

ただ、いずれにしても開発段階から入れるお客さまの方が話は進めやすいです。完成品のイメージを共有しながらまずは成型品の最適な形状を模索し、それが固まったら設計思想を決めてクリエイトするのが私たちの仕事。大手にはない小回りの良さを生かした「対応力」と、長年培ってきたノウハウを基にした「提案力」を武器に、魅力的なプロジェクトを一緒に進めたいと考えております。また、弊社は中国に拠点を有しているので、中国に生産拠点がある企業さまにとってはメリットを生かせるでしょう。

ハヤシテクノの金型設計についてより詳しく知りたい方は、下記のボタンからお問い合わせください。